寄生虫
「部屋に入るのが嫌で、着替えれなかった」


あたしはボソッと呟くようにそう言った。


バカにされるかもしれないと思うと、大きな声では言えなかった。


「部屋に入るのが嫌って……」


バラは一瞬困ったような表情を浮かべたけれど、すぐに察したようで「そっか。じゃぁあたしの部屋着でも着てるといいよ」と言い、2階から服を持ってきてくれた。


「ありがとう……」


あたしはバラの服を受け取ってぎこちなく笑う。


姉の服を着るのは小学生ぶりくらいだった。


昔は嫌でもお下がりばかりを着せられていたため、意地でもバラの服は着ないと心に決めていたのだ。


子供の頃の決意をこんな形で破る事になるとは思っていなかった。


でも、嫌な気はしない。


あたしはさっそくバラの部屋着に着替えて、洗濯物を畳んでいった。


リビングの床にペタンと座って洗濯物を畳んで行く作業は、単純だけれどどこかくすぐったさを感じた。


きっと、あたしの前にバラが座って一緒に畳んでいるからだと思う。


畳み方が雑だとかバラからのダメだしが出るかと思ったが、なんとか最後まで何も言われずに終える事が出来た。
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