寄生虫
☆☆☆

京介を連れて移動してきた先は廊下の奥にある多目的トイレだった。


男女で入るのは少し気が引ける場所だけれど、今の時間誰の目にもつかずに話せる場所はここくらいしかなかった。


「どうしたんだよ」


京介はすっかり目が覚めたようで、瞬きを繰り返している。


「いきなりごめん。ちょっと聞きたい事があって」


あたしは自分の行動に若干緊張しながらそう言った。


教室に入れば常に真尋と一緒にいる事になる。


そうなれば克哉の話を京介から聞く事ができなくなってしまうんだ。


だから、強引だと思いながらもこんな手段しかなかった。


「なんだよ」


京介は首を傾げてあたしを見る。


「克哉って……最近、変わった?」


「克哉? あぁ、練習熱心になったな」


京介はそう言って嬉しそうにほほ笑む。


「それってさ、誰かに何か言われて変わらなきゃって思ったのかな?」
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