寄生虫
あたし
あたしはようやく小柳サナギとして成虫になることができた。


血まみれの室内。


骨だけになった少女を見下ろしてあたしは解放感から大きく伸びをした。


バラバラだったパーツはすべてくっつき、今では誰がどう見ても小柳サナギにしか見えない。


これがあたしの成虫の姿だった。


この血まみれの部屋じゃ怪しまれるけれど、掃除をするのは簡単だった。


今まで小柳サナギを通して見て来たようにすればいいだけだから。


あたしの友達……菊谷克哉の場合もそうだった。


彼……いや、彼らは12月末に菊谷克哉として成虫になった。


彼らは菊谷克哉が生前望まれていた通り、サッカーや勉強を頑張っていた。


でも、人間の体がどのような構造でできていて、どうしたら死にいたるか。


それを勉強不足だったのだ。


結果、菊谷克哉という成虫は死んでしまった。


それはとても残念に思う。


だけど、菊谷克哉は最後に自分の子孫の残して行った。


口から吐いていた虫。


あれは菊谷克哉という成虫の子供たちだったのだ。


少なくともあの院内にいた全員に寄生するだけの数はいただろう。


熱中症による幻覚症状と自律神経失調症。


そんなくだらない判断をした人間たちに感謝したいくらいだ。
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