干物ハニーと冷酷ダーリン


『営業はどこに目を付けている?この漫画はアニメ化が予定されている。これには先行上映の応募券もついてんだ。6万でも足りないくらいだ』


水城さんは、資料をテーブルに叩き付けながら営業部もとい長谷川さんに啖呵を切る。


『何だと!水城、もっと現状を見てみろ。在庫を抱えすぎたらどれだけの損失になると思っている!』


長谷川さんもここぞとばかりに、資料を叩きまくる。


あのー。お二人共。その資料は武器でもサンドバッグでもないのですが。


はっ!高橋さん。高橋さんは大丈夫なの?


ちらっと横に座る高橋さんを見る。

ピクリともせず、ただひたすら唖然としていた。
大丈夫、正常な反応だ。



『はぁ?損失だと?なら、増刷をかける事態になった場合、どれだけの損失が出ると思っている?速くても1週間はかかる、その間の売り上げがどのくらいだと思ってんだ!』



『それにしても、多いって言ってんだ!どれだけ各書店に置いてもらえると思ってんだ!漫画はこれだけじゃないんだ!』



『特設コーナーでも作ってもらえよ。それが営業の仕事だろ。俺達は売れるものしか作ってねぇんだよ!営業がそれを潰してどうすんだよ』



ビシビシ バシバシ バチバチ。

火花なんてもんじゃない。
打ち上げ花火がドッカンドッカン上がっている。


水城さんと長谷川さんの攻防に、何だかおいてけぼり感のあるあたし達。

統括マネージャーの谷さんなんて、欠伸をする始末。
総務部の北原さんなんて、若干引いてますよ。





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