干物ハニーと冷酷ダーリン
準備に時間をとらない点では干物女は有難いが、これはどうなんだろうか。
確かに寝癖は一発で直ったが、びしょ濡れだ。
川本には、ドライヤーで乾かす概念がどうやら欠けているようでさっさと玄関に向かい逆に俺を待つという展開が生まれた。
「水城さん、どこ行きます?」
『……後藤さん』
「ああ!いいですね!あたし最近行けてなかったんですよ!」
俺も川本干物女でした以来、時間に余裕もなかったので行けないでいた。
それに、多分外食は専ら後藤さんのカフェ以外は行かないであろう川本にも合わせてやった。
見知らぬ場所で飯を食うくらいなら、コンビニで済ますのが川本だ。
『その前に、お前の家見に行くぞ』
「えっ?家ですか?」
きょとんとしている川本に思わずツッコミたくなったが、相手が相手なので止めた。
こいつは、仕事以外では馬鹿であることも俺は知っている。
『状況次第では、引っ越さないと駄目だろ』
「ひ、引っ越し!?………面倒ですねぇ」
『大家からの連絡は?』
ガサガサと鞄の中を探り、スマホを取りだし確認する川本はピタッと固まった後、俺を見る。
「……充電が切れてます」
この女、1度絞めてもいいだろうか。
俺のでかけてみろと言った所で、大家の番号など覚えていないだろうな。
『……先に大家の所に行くぞ』
「えっ、、、ご飯は?」
『その後だ。アホ』
どこまでも能天気な川本に大家の所まで案内してもらい、直接アパートの状況を教えてもらう事にした。