干物ハニーと冷酷ダーリン
隣人でもある黒崎さんは、もう虫の息だったので、そっとしておこう。
喋るな危険。
触るな危険。
落ち着いたら飲みにいきましょう。
その時はあたしも飲みます。
お祝いしましょう。半年後くらいに。
とは言え、あたしも人の事は言えない立場である。仕事をせねば。
立ち上がったPCに向かい一通り社内メールに目を通して返信していく。
その間にも電話片手に久留米先生に連絡をする事は忘れない。
もちろん、問題児なので出るわけがなくひたすらリダイヤルを押しまくる。
これが漫画家と担当編集者でなければ、ただの嫌がらせの迷惑行為でしかない。
職種柄って大事よね。
10回目のリダイヤルを終えた後、あたしは走り出す。
そう。久留米先生宅に向かう為に。
気持ちはもはやメロス。
高橋さんに、お昼頃には戻る事を伝え出版社を出た。
途中で水城さんらしき人にすれ違って何か言われた気がしたけど、気が付かなかった事にしよう。
原稿第一。
こう見えて、あたしも原稿落ちスレスレの崖っぷちなのである。
余裕かましてる場合ではないの。
フレックスタイム制を自慢してる場合ではないの。
他の人を心配してる場合ではないの。
兎に角、ピンチなのである。
脳裏に印刷所のおハゲ所長の顔がちらついてならない。