干物ハニーと冷酷ダーリン
これはOKのサインです。
そそくさと打ち合わせ室を出て、編集部に舞い戻る。
『あれー?川本、もう終わった?』
「ああ、黒崎さん。ちょっとコーヒーを入れにですねぇ」
『そー。で、どうよ今の子たち?採用されそう?』
「…さぁ、どうでしょう?」
あたしは、部署内の片隅に置いてあるお客様専用飲み物コーナーでコーヒーカップにインスタントコーヒーを入れていく。
お客様のコーヒーまでインスタント。
しかも、当番制で各々実費で買ってくるというどこまでもケチな出版社である。
それでも、また電気ポットなだけましだ。
これは、我らが編集長水城さんに泣きついてポケットマネーから買ってもらったやつだ。
このポットは実は2代目。初代ポットは締め切り間近で追い詰められた、とある先生の頭がおかしくなり叩きつけられ犠牲になってしまった。