干物ハニーと冷酷ダーリン
呼ばれたと思って、水城さんのデスクに目を向けても編集長様の姿はない。
あれ?あたしもついに幻聴が聞こえるまでに限界がきたのか?
『こっちだ』
「あぁ水城さん。今戻りました」
編集部の隣の部屋の資料室のドアから、顔を覗かせる水城さん。
幻聴じゃなくて良かった。
『戻ってすぐに悪いが、これ頼む』
どすんっと、手に持っていた段ボールを床からテーブルに乗せていくこと3箱。
げっ!これは…………。
『…なんだ?』
「あっ、いえ、何でもないです。」
眉間にシワを寄せ、怪訝そうにそのキレイな顔を歪ませた水城さんに何も言うまい。
『頼んだぞ』
颯爽と資料室を出ていく水城さんの背中を見送って盛大な溜め息をつく。
川本かなで まだ帰れませんでした。