ラブリー
もう何で振られた相手と一緒の部署で仕事をしないといけないんだろう…。

「お先に失礼します」

「はい、お疲れ様です」

オフィスに残っているのはわたしと小宮課長の2人だけになった。

さて、わたしもそろそろ帰るとするか。

今やっていた仕事の保存を済ませると、パソコンの電源を落とした。

「小宮課長、わたしもお先に…」

「なずな」

わたしの言葉をさえぎるように、小宮課長がわたしの名前を呼んだ。

普段から呼んでいる“堤さん”ではなかった。

大人になってから彼に名前で呼ばれたのは初めてだったので驚いた。

「な、何ですか?」

平静を装っているけれど、実際は名前で呼ばれたことに戸惑っていた。

一体何を思って、名前で呼んできたのだろう…?
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