ラブリー
家が隣同士で、母親同士が親しかったと言うこともあり、幼い頃は小宮課長――その当時は“健ちゃん”と呼んでいた――によく遊んでもらっていた。

わたしよりも10歳年上の健ちゃんは子供の頃からとてもかっこいい人で、憧れの存在でもあった。

その憧れが恋へと変化するには、そんなにも時間はかからなかった。

同い年の男の子なんて視界に入らなくなってしまうくらい、わたしは彼を男として意識していた。

あれは、小学5年生のバレンタインデーだっただろうか?

11歳だったわたしは大学生だった健ちゃんに、昨日の夜に作った手作りのチョコレートを持って彼に初めての告白をした。

勇気を出して告白したわたしに、
「ごめん、今は無理なんだ」

彼は返事をした。

…どん底に突き落とされたとは、まさにこう言うことを言うんだと11歳のわたしは理解した。
< 8 / 108 >

この作品をシェア

pagetop