完璧執事の甘い罠


「じゃあ、皆元気でね」

「これが最後の別れではありませんから。里帰りの機会はしっかり作るつもりなのでご安心ください」



ひな様とエリックさまが隣に並ばれ別れの挨拶を告げる。
見送りのために出てきた城の者たち。


私は、執事としてその場にいる。
綺麗に着飾ったひな様をこの目に焼き付けるため、目を反らすことなくその姿を見つめる。



エスコートされひな様が馬車へと乗り込み姿が見えなくなるまで。




「・・・お前ら、ほんとバカだよ」

「なんとでも言ってください」

「あいつもお前も、国のために犠牲になる必要なんて、ないだろ」



騎士として、自分の人生をかけているあなたに言われたくありませんよ。
そう思いながらも、口には出せずただ去っていく馬車を見つめ続ける。




「なんのために、俺は・・・」




ノエルの呟きも。
私はまた、聞かなかったことにするのだ。




< 319 / 357 >

この作品をシェア

pagetop