完璧執事の甘い罠

色褪せた日々



まさか私が、政略結婚をすることになるとはきっと一年前の私は一ミリも思っていなかった。
シーエン王国に来て1週間。

きっと私はとてもよくしてもらっている。
エリック王子はいつだって優しくて、私を気遣ってくれるし。
こちらのメイドさんたちもとてもよくしてくれる。
ヨハンがいるのはとても安心するし。



それでも、欠けているものがあるとするなら。



ここにジルの姿がないこと。




「ねぇ、ジル・・・」




読んでいた本から顔をあげ、思い立ったように笑顔で振り返れば。




「あ・・・」




戸惑ったようなヨハンの姿が見えた。
これで、何度目だろう。


側にジルがいないことに、慣れない。




「あ、あはは・・・。ごめんね。なんだろう、口癖になってるのかな」

「いえ・・・、そんな・・・」



ヨハンはなんとも言えず言葉を濁す。
わかっているはずなのに、ハッと気づいた後のがっかりした感覚が苦しい。



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