完璧執事の甘い罠
なんて書こう。
なにを書けばいいんだろう。
私は元気です。
ありきたりだ。
伝えたいことはたくさんあるのに。
話したいことは数えきれないほど。
それなのに。
アルバーナを出て1週間。
たったの1週間だけど、ずいぶんジルに会っていない気がする。
ジルに会いたい。
その思いを、ここに記してもいいかな。
弱音を吐きたくはないけれど。
泣き言も言いたくないけれど。
それでも、ジルには本当の事を知っていてほしい。
強がることなく。
隠すことなく。
私を知っていてほしい。
「ひな様・・・?」
ノックの音がした後、伺うような声。
これは、エリックさまの声だ。
「はい!」
私は取り出した便箋を引き出しにしまうと、慌てて扉の方へ向かった。
「部屋にいたんだね。よかったら、少し庭に行かないかい?」
「庭・・・ですか?」