完璧執事の甘い罠


でも、私にはわかるの。
ジルの愛がたくさん詰まった言葉だって。


きっとジルも、中身が読まれるかもしれないってことわかってた。
だからこそ、当たり障りのない文章で書かれている。
わかってしまう。

ジルは、完璧で冷静で、執事の鏡のような人だから。



「・・・ありがとうございます」

「僕は、きっとかなわないんでしょうね」



ポツリと、囁くように呟かれた言葉。
私はえ?とエリックさまを見る。



「キミから彼に送られた手紙にも、その手紙にも僕には愛が溢れているように思えてならない」

「え・・・・・・」

「とても、当たり障りのない言葉に思えるけれど。僕にはわかる。キミの事が好きな僕だから」



私は言葉に詰まる。
だって、そんな。

ばれてはいけない想いだった。

まるでままごとのような恋だった。
身分違いの恋。



アルバーナにいる時でさえ、かくしていた恋だったのに。




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