完璧執事の甘い罠
「たとえ、勝手に言ってることだとしてもだ。そうなることだってあるってことだろ」
「・・・うん」
「だったらお前は、俺やジルみたいな近くの人間より、もっと他に見なくちゃいけないものが、人が、あるんだ」
ノエルの瞳はまっすぐと。
私は目を反らせずにいた。
「お前の小さなその両手には、アルバーナ王国の大勢の国民の未来が託されてる。俺たちがお前を護るっていうことは、お前の手に託されたその未来ごと護るってことだ」
「私の手に・・・?」
「お前は、この国の象徴になる。この国を平和に導いていくのが、お前なんだ。だからお前は、生きなくちゃいけない。だから、お前は護られるんだ。お前は、お前自身が国なんだ」
その言葉は壮大すぎて、いまいちピンとこない。
だってそれは、私には荷が重すぎて。
重くのしかかってくるもので。
国だとか、人だとか。
そんなもの、私には抱えきれない。
でも、きっとずっとジルたちはそう言う話をしていて。
私は、それから逃れようとしていて。