副社長は束縛ダーリン
『ラッキー!』と心に呟いて、ランニングマシンに乗り、コースを選んでスタートさせる。
このマシンの前の壁には、テレビ画面がついていて、選んだコースに応じて景色が映し出される。
ホノルルコースを選んで走り出すと、それに合わせて、綺麗な南の島の海岸沿いの景色が流れていった。
走り始めて二、三分が経ったとき、隣のマシンで走っている中年男性に、誰かが「すみません」と声をかけていた。
椰子の木と白い砂浜から目を逸らした私が、声のする方を見たら……また、あの美人な彼女で驚いた。
「あと、どのくらいで終わります?」
「ええと、そうですね、三十分くらいかな……」
「まぁ、三十分も? そんなに走らなくても、お兄さんの体は引きしまって、とても素敵よ。
私、今日は時間がなくて……譲ってくださいません?」
上品に微笑む彼女だけど、その強い目力に有無を言わせぬ迫力を感じた。
男性の表情は私からは見えないが、耳まで赤くなっていて、褒められて照れている様子。