副社長は束縛ダーリン
無様な私を振り向いて見下ろしているのは彼女で、ハイスピードで走りながら、勝ち誇った笑みを浮かべている。
「大丈夫ですか!」と駆け寄ってきたのは、フィットネスクラブのロゴ入りティーシャツを着た、若い男性トレーナー。
利用者の注目を浴びる中で抱き起こされて、私の羞恥心はさらに高まることとなった。
顔を真っ赤に染めた私は、「大丈夫です。怪我してません。この通りピンピンしてます」と早口で伝えて立ち上がり、彼の腕を振りほどくようにして、急いで他のマシンへと逃げ出した。
ランニングマシンとは別の壁際には、エアロバイクがずらりと並んでいる。
それは動かない自転車のようなマシンで、これなら転ぶ心配はないと、空いていた一台にまたがった。
今度こそ、マイペースに汗を流そうと、漕ぎ出したけれど……。
隣の一台も空いていて、私が漕ぎ出した直後、それにまたがったのは大人美人の彼女だった。
なんで、ついてくるの!?
これはもう、偶然ではない。
理由は分からないけれど、完全にロックオンされたようで、エアロバイクでもなぜか競い合ってしまった。