副社長は束縛ダーリン
それに色気を感じて、瞬時に顔が熱くなり、心臓が跳ねる。
タクシーの中だというのに、私はなにを期待しているのだろう……。
目線ひとつでキスしてほしい気分にさせられて、その気持ちを恥ずかしく思っていたら、急に肩に腕を回され引き寄せられた。
もう一方の手は私の顎先をつまみ、数センチの距離まで顔を近づけてくる。
タクシーの運転手に気づかれてしまう……。
胸を高鳴らせつつ、そんな心配をしていたが、彼の口の端がニヤリと吊り上がるのを見てしまった。
「朱梨ちゃん?」
「え……“ちゃん”って……」
「俺になにか隠してるよね?
白状しないと、このままさらって、家の中に閉じ込めちゃうよ?」
どうしよう、勘づかれているみたい……。
さっき以上の窮地に追い込まれて、青ざめる私。
そう聞くということは、いい女計画の内容までがバレたわけではないようだから、なんとかごまかせないかな……。
誘拐と監禁するぞという脅しは冗談だと思うけれど、嫉妬深い悠馬さんなら、やってもおかしくない気もして心配になる。
「えーと、隠し事って、なんのことでしょう……」
取りあえず棒読みでごまかしてみたら、額をコツンとぶつけられて、さらに距離が縮まった。
とてもじゃないが、目を合わせていられない。
なんとかこの場を切り抜けたいと心で足掻きながら、心地よく冷房の効いた車内で、ダラダラと冷や汗を流すのだった。