副社長は束縛ダーリン

泉さんの左手の薬指にキラリと光るのは結婚指輪で、私が入社する前の年に社外の男性と結婚したと聞いた。

帰ったら旦那さんのために夕食の支度をするのだろう。

しっかり者で知的な大人の女性といった雰囲気のある泉さんでも、旦那さんには甘えたりするのかな?


そんな想像をしつつ、「お疲れ様でした」と笑顔を向ける私。

泉さんも口元に笑みを浮かべてくれたけど、その視線が私の手の中のスマホに移動すると、少々心配そうな顔付きに変わる。

しかし彼女はなにも言わずに歩き出してドアから出ていき、その姿はすぐに見えなくなった。


泉さんが心配そうな顔をしていた理由……それは、私が悠馬さんに退社メールを送っていたことに気づいたからだろう。


交際を始めて三ヶ月。

初めの頃は社内恋愛に浮かれる私を姉のように嗜めつつも、「よかったね」と言ってくれた泉さんなのに、最近はよく心配そうな目で見られる。

どうしてだろうと思っていたけれど、今日初めて『窮屈じゃないの?』と問いかけられて、その意味を理解した。

< 19 / 377 >

この作品をシェア

pagetop