副社長は束縛ダーリン
「そっか。ライバルって結構いたんだね。全然気づかなかった」
ただの感想としてそう言えば、ユッコはフッと笑って、好意的な視線を私に向けた。
「この前、社食で見たよ。朱梨がトレーを手に空席を探していたとき、事業部の女子社員にわざとぶつかってこられたよね」
「わざと? 違うよ。すみませんと謝ってくれたし、多分私が歩調を緩めたから、後ろにいた人にーー」
「わざとなんだよ。はたから見てればすぐ分かった。コップの水をかけられたときもあったじゃない。かけられたあんたが、なんで謝るのよと思って見てたけど」
あれも社食でのことで、水をかけられたといっても着替えの必要がないほどの少量。
周囲を確認せずに立ち上がった私も不注意だったから、総務部の女子社員に私から謝った。
相手に悪意はないと思うんだけど……。
「嫌がらせなんだよ」と言い切るユッコに、納得せずに首をかしげる私。
するとユッコは呆れたような溜め息をついてから、口元に笑みを戻して大きく頷いた。