副社長は束縛ダーリン
注文を取りにきた店員に彼女が答える。
「アイスコーヒーひとつと、朱梨さんはフルーツパフェでいいのかしら?」
「いえ、私はアイスティーで……」
フルーツパフェに浮かれていた気分は、とっくに消え失せた。
こんな状況でひとり、パフェにはしゃげるほど、私は子供じゃない。
「そう……。じゃあ、それで」と言って注文を終えた彼女は、観察するような視線を私に浴びせてなにも話さない。
私から話すべきこともないので、落ち着かない気持ちでうつむいて座っていたら、飲み物が運ばれてきてからやっと、彼女のリードで会話が始まった。
「この前のイベント、ユキヒラ食品の宣伝効果は上々だったようね。どこよりも足を止めるお客様が多かったように見えたわ。それと……」
販促会でのうちの社のブースに対して、上手な褒め言葉を並べられ、ただ尻尾を振っていただけの私がなぜか「ありがとうございます」と、社を代表してお礼を述べる。
緊張しながら飲むアイスティーは味気ない。
できればガムシロップを追加したいと思いつつ、このまま販促会の感想とお世辞のみで終わってくれないかと願っていた。