副社長は束縛ダーリン

そんな期待をしかけて、うつむいていた顔を上げたら、悠馬さんと目が合い、「なにやってんだよ」と叱られた。


「望月に言いくるめられて、こんな契約書まで交わしてくるとは……呆れるな。もう少し考えて。判断できないなら、なぜその場で俺に電話しない?」


「電話……そっか、悠馬さんに聞けばよかったんだ。それさえ思いつかなくて、本当にごめんなさい。ユキヒラ食品を潰すようなことを言われて、焦っちゃって……」


「望月フーズが冷凍コロッケを作らないのは、利益を見込めないからだ。創業以来うちが独走して、コロッケといえばユキヒラだと、全国に浸透しているから。
望月が参入したって、うちは潰されない。失礼なことを言うな」


愚かな私は悠馬さんの不機嫌さをもう一段階進めてしまい、「すみません……」と肩を落として謝った。

潰すようなことを言ったのは、望月さんの虚勢だったということなのか。

彼女にもらった大企業の名刺は、まるで黄門様の印籠のように感じてしまい、恐れおののいた私は、つい彼女の言葉を疑うことなく信じてしまった。

悠馬さんの言う通り、天下の望月フーズといえども、冷凍コロッケでうちが負けたりしないのにね……。

< 277 / 377 >

この作品をシェア

pagetop