副社長は束縛ダーリン
そんな……。
震える手で悠馬さんのスーツの腕に縋り、その顔を見上げたら、悔しそうな、苦しそうな顔をする彼を見てしまった。
唇を噛みしめて彼女を鋭く睨むだけ。
言い返す言葉を見つけられずにいるようだ。
ともに青ざめる私たちの顔を見て、彼女はクスリと笑い、言葉を付け足す。
「安心して。朱梨さんが勝てば、すんなりと身を引くつもりよ。勝てたら……ね」
私が勝つとは微塵も思っていないくせに、そんな言い方をする彼女を意地悪に思っていた。
私の中に怒りが芽生える。
それと同時に怖気はどこかに飛んでいき、なんとかして悠馬さんを守らなければという闘志が湧いてきた。
「もう始まるわよ。ステージに行きましょう」と歩き出した彼女の背中を、「待ってください!」と引き止める。
一歩前に出て、悠馬さんを背中に隠したのは、守りたい気持ちの表れ。
容姿も頭の程度もなにもかもが彼女に劣る私で、さらにはコロッケ勝負の旗色まで悪いけど、悠馬さんだけは絶対に渡せない。
なんとかして彼女に悠馬さんを諦めさせることはできないかと、ない知恵を振り絞った結果、ひとつ思いついたことがあった。