副社長は束縛ダーリン
忘れないように、今教わったことをメモしていると、「じゃ、作り直しで」と三上さんがミーティングを締めくくり、わずか十分足らずで泉さんの新作コロッケ試食会はお開きとなった。
男性たちは全員すぐに立ち上がり、各々のデスクや調理台に戻っていき、ミーティングテーブルには私と泉さんが残される。
「やっぱり駄目だった」と自嘲気味に笑う泉さん。
私はメモの手を止め、両手を握りしめると、正面に座る彼女を全力で励まそうとした。
「このコンセプトでの試食会はまだ一回目じゃないですか。泉さんなら次は絶対、すごいの作れると思います。元気を出して頑張ってください!」
後輩から先輩へのエール……のつもりだったのに、泉さんの眉間に皺が寄る。
知的な眼鏡の向こうの奥二重の瞳が幅を狭め、ジロリと睨まれてしまった。
「なんで一番下っ端の朱梨に慰められなきゃいけないのよ。朱梨こそ頑張んな。
あんたのレシピはいつも変なのばかりで、ミーティングに出すことさえできないじゃない」
「え、私はまだ勉強期間というか、二年目に入ったばかりですし……」