【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 
彼女は秘書課の大先輩で、社長付きの秘書のひとりだ。
多忙な社長には大野さんのほかに、常に行動をともにするベテランの男性秘書がついている。

「もし桃井が専務の担当になったら、三日で異動ね」
「なんでですか?」
「担当する上司に惚れるなんて、秘書失格だからに決まってるでしょう。あんたが玉の輿を夢見るなんて、百万年早いわよ」
「えーっ」

大野さんの言葉に、桃井さんが不満そうに声を上げる。

「実際、冬木が担当になる前は、立て続けに三人くらい異動になったのよ。誠人さん、あの端正な顔の上に人懐っこい性格だから、一緒に仕事をしてる女を無自覚に誑かすんのよね」
「あー、だから冬木さんが専務の秘書になったんですね」
「冬木なら、ちょっとやそっとじゃ揺らがないからね」
「鉄の女ですもんね」

しみじみとそう言ってうなずき合う大野さんと桃井さんに反論したかったけど、無表情で黙り込む。
背筋をぴんと伸ばしたまま眉ひとつ動かさない私に、大野さんは髪を揺らして小さく笑った。


 

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