【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

わ、可愛い……! どうしよう、嬉しい!

心の中でそう叫んだけれど、そんな高揚感は少しも表情に出さず、冷静な表情のまま専務の顔を見る。

「俺が持ってても使わないし、あげるよ」
「使わないんでしたら、いただきます」

にこりともせず頭を下げる可愛げのない私の態度に、専務はきっちりと締められたネクタイを軽く緩めながら小さく笑い頷いた。

仕事中に専務がネクタイを緩めるなんてめずらしい。
取材が思ったより長引いて、疲れているのかもしれない。

「なにかお飲み物お持ちしますか?」

そうたずねると、専務は嬉しそうに首を縦に振る。

もうすぐお昼だし、コーヒーはさっき出したし。
取材でたくさん喋って、喉も乾いているだろうからアイスティーにしようかな、なんて思いながら会釈をし、役員室を出る。

ぱたんと扉が閉まってから、重厚なその扉に背をもたれ、ため息をついた。

あー、もう。
どうして私は素直に嬉しさを表に出せないんだろう。
『嬉しいです』って、『大切にします』って、笑顔で言えたらいいのに。

ひねくれた自分がイヤになる。

胸に抱いた『にゃんだろう君』グッズ。
それを見下ろしてもう一度ため息をつき、秘書室に向かう。

自分のデスクに専務からもらったグッズを置き、秘書室のすぐ隣にある給湯室でお茶の準備をしていると、専務が役員室から出てきてこちらにやってきた。

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