【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 
「どうしました?」
「コーヒーより冷たいのがいいなってリクエストしに来たんだけど……」

専務は言いながら私の手元を見て、にっこりと笑った。

そこには茶葉の入ったティーポットと、冷やす用の氷がたくさん入れられたもうひとつのポット。
そしてアイスティーを入れるために用意したグラス。

「さすが詩乃ちゃん」

そう微笑まれ、首を横に振る。

「いえ」

妙に照れくさくて、いつも以上に無表情になる。

こんな時、可愛く笑って恥じらえたらいいのに。
まったく役に立たない自分の表情筋を恨みたくなる。

そんな私の気持ちを知らずに、専務はごきげんの様子で私がお茶の支度をするのを眺めていた。

「後で役員室にお持ちしますよ?」

とやんわりと仕事に戻ってくださいと促したけれど、専務は首を横に振って狭い給湯室の壁に寄りかかる。

そこにいられると、なんだかすごく落ち着かないんですけど。
普通にお茶を入れているだけなのに、背後から専務に見られていると思うだけで、彼の視線に晒されたうなじのあたりが熱くなる。

平常心、平常心。

そう自分に言い聞かせて、蒸らし終わった紅茶の茶葉を濾しながら氷が入ったポットに移し替える。
カラリとガラスのポットに氷のぶつかる音が響く。

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