【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
その時、桃井さんの声が聞こえてきた。
「わー! 『にゃんだろう君』だ。かわいい!」
思わず秘書室の方を見ると、桃井さんが私のデスクの上にあった袋を勝手にのぞき、歓声を上げていた。
「桃井さん。それ、冬木さんのだから」
専務がそう言いながら壁にもたれていた体を起こし、秘書室へと歩いて行く。
「そうなんですか?」
なにか言いたげな桃井さんに、専務は無言で頷く。
そして桃井さんの手にあったクリアファイルを優しく取り上げる。
その様子を給湯室からのぞいていた私の姿に気づいた桃井さんが、こちらにむかってにっこりと笑った。
「でも、冬木さん。こんなのもらっても困りますよね?」
そう問われ、どういう意味だろうと首を傾げる。
「だって冬木さん、こういう可愛いの、似合わないですよ」
笑顔でそう言われ、何か言おうと開きかけた口元が凍りついた。
「冬木さん、持ってるもの全部、実用性重視のシンプルなものばっかりだし、こういう可愛いキャラクター嫌いですよね?」
「そうなの?」
桃井さんの言葉に、専務がこちらを見る。
「冬木さんは猫とか犬とかの可愛い動物よりも、爬虫類とか飼ってそうですよね」
無邪気な笑顔でそう言う桃井さんに、眉をひそめようかと思ったけれど、うまく顔の筋肉が動かなかった。