【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「専務……、じゃなくて、誠人さん。誠人さん」
ぶつぶつと聞こえてきた独り言。
洗面台の鏡に向かい、ひとりで呼び方の練習をしているんだと気づいて、微笑ましくて思わず吹き出しそうになる。
さっき、呼び方なんでどうでもいいなんて、あんなに可愛くないことを言っていたくせに。
「あー、もう……。ドキドキしすぎて誠人さんなんて、呼べない……」
扉を一枚隔てた向こうで、そんな可愛い独り言を言いながら頭を抱えている彼女に気づかれぬよう、声を殺してクスクス笑う。
「ほんと、お前のご主人様は不器用でひねくれてて可愛すぎて困るね」
手に持ったぬいぐるみに小声でそう話しかければ、ハチにそっくりのぬいぐるみは、『そうでしょう?』と頷くように微かに笑ったように見えた。
さぁ、これからどうしよう。
この扉を今すぐ開いて、驚いた彼女を強引に抱きしめようか。
それとも大人しくベッドに戻り、彼女が練習のようにちゃんと俺を名前で呼べるまで意地悪に見守ろうか。
そんな事を考えながらこつんと扉に背中をもたれて、肩を揺らして笑いをこらえた。
番外編【扉の向こうの小さな物音】END


