【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「ただいまー」
そう言って部屋の中の電気を付ける。
いつもなら、私の足音を聞きつけて玄関で待っていてくれるハチの姿が今日は見えなくて、首を傾げながら靴を脱いだ。
「ハチー? 寝てるの?」
言いながらコートを脱ぎ部屋の中に入る。
床の上においてある餌皿が、朝ごはんのカリカリを入れたまま手を付けられてないことに気づいてハッとした。
もう夜なのに、少しもご飯を食べてないなんて、おかしい。
慌てて部屋を見回して、床の上に倒れたまま動かないハチの姿を見つけ悲鳴を上げた。
「ハチ……!?」
駆け寄り抱き上げる。
かろうじて息はしているけれど、私の声掛けにまったく反応がない。
苦しげに目をつぶったまま、ピクピクと手足が微かに震えていた。
「大丈夫!? ハチ……!」
そういえば、今朝もベッドの上から動かなかった。
あの時から具合が悪かったんだ。
異変に気づいていたのに、深く考えずハチをひとりにしてしまった。
あの時すぐに病院に連れていけば……。
後悔にじわりと瞼が熱くなる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
混乱して、すがるようにぎゅっとハチの体を抱きしめた。
けれどハチは目を開くどころか、かろうじて微かに呼吸を繰り返すだけ。
もし、このまま死んでしまったら……?
不吉な予感に背筋が冷たくなる。