【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 
ダークグレーのスーツに白のシャツ。首元に付けられた黒とチャコールグレーのチェックのネクタイ。
とてもおしゃれで似合ってはいるけど、新聞の取材なら変えたほうがいいだろう。

新聞の紙は元々グレーがかっている。そこに白黒の粒子の荒い写真を印刷されるのだから、細かなチェックのネクタイの柄は、ぼやけてくすんだ印象になってしまう。

創業二百年を迎えてなお成長し続ける、大企業を引っ張る若々しく力のある専務。それを印象付けたいなら、断然こちらの方がいい。

そう思ってコントラストのはっきりとした、ピッチの広いレジメンタルストライプのネクタイを選んだ。

「おかしくはないですが、新聞に掲載される写真だと……」

私がネクタイを取り替える理由を説明しようとした途端、専務はのん気に笑い「ネクタイを選んでもらうって、なんか新婚さんみたいだよね」なんて見当ハズレなことを言い始める。

反論しようとした私の前で、専務の長い指が無造作にその首元に伸びた。

乱暴にネクタイの結び目に指を引っ掛け、そのまま緩める。
閉ざされた役員室に、シルクのネクタイの衣擦れの音が響いた。
慣れた仕草でネクタイを緩め、こちらを見下ろしながらシュッと音をたて首元からネクタイを引き抜く。その何気ない仕草に、私の喉が小さくこくりと鳴った。

ただネクタイを外しているだけ。
なのに、なんでいちいちこの人は……。

思わず見とれそうになる自分を戒め、無表情で外したネクタイを受け取る。

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