【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
専務は私が選んだネクタイを首に付けると、「どう?」と笑顔でこちらを見た。
うん。とても似合ってる。
専務の甘い顔立ちを、はっきりとした色合いのレジメンタルストライプが引き締めて、いかにも『出来る男』という雰囲気だ。
だけど、ちょっと……。
「少し曲がってます」
私が指摘すると、専務は「そう?」と首を傾げながら自分の胸元を見下ろす。ぐいぐいとネクタイをいじる適当さに、じれったくて思わず手がでた。
「……失礼します」
そう言って、専務の胸元に手を伸ばす。丁度私の視線の高さくらい。背の高い専務の首元と向かい合い、付けたばかりのネクタイを美しい形に整える。
きゅっと首元を締め、頷いてネクタイから手を離す。
「これでどうですか?」と専務のことを見上げると、驚くほど近くに整った顔があった。
動揺で目を見開く私をよそに、専務は目の前に立つ私の髪に頬を寄せ、くんくんと鼻を動かす。
髪の毛に微かに専務の高い鼻が触れる感触がした。
「詩乃ちゃん、今日なんかいい匂いがする」
「冬木です」
条件反射のように訂正しながら、動揺が表情に出ないように必死でこらえる。