【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
冬木詩乃。
それが私の名前。
その名の持つイメージ通り、冷たくて愛想のないつまらない女だ。
なにを言っても動揺しない、慌てない、常に冷静沈着の『感情を捨てた鉄の女』だ、なんて影で言われてる。
二十六歳の独身の女が『鉄の女』なんて言われて嬉しいはずがないけど、自分に可愛げがないことも、いやってほど自覚してるから仕方ない。
私だって本当は、女の子らしくて可愛いなんて言われてみたいけど、そんなの自分には似合わないって、ちゃんと分かってる。
胸あたりまでの黒い髪をひとつに結び、なんの飾り気もないシンプルなスーツに黒いベーシックなパンプス。ネイルは爪の先が割れないように透明のトップコートを塗るだけだし、メイクも清潔感があればいいと社会人として最低限のことをするだけ。
そんな私がなぜか、秘書という華やかなイメージの職についてもう二年がたつ。
まぁ、秘書の日常なんて、一般的なイメージとはかけはなれた、地味な雑用ばかりなんだけど。
日本有数の食品の卸売専門商社、綾崎グループ。
元々は小さな呉服屋としてはじまった綾崎屋が、明治のはじめに醤油や酒の問屋として業種転換し、今では国内トップスリーの売上高を誇る食品専門商社になった。