おはよう、きみが好きです



***


校外学習が終わり、季節は梅雨に突入。

6月のこのジメジメさときたら……。

今日も生憎の雨。

あたしの長いストレートの髪も湿気でクルクルして、気分までどんよりする。



「泪、髪が跳ねてやんの」

「仕方ないじゃん、あたしの髪、湿気に弱いの!」



八雲はあたしの跳ねた髪を指にくるくると巻き付けては離すの繰り返しで遊んでる。


「別に、俺は泪の髪ふわふわでいい匂いするし、好きだけど」


「なっ……ななっ」


「で、そーやって俺の言葉に赤くなっちゃうところも好きだぞ、俺は」


「アホか!!」


何言ってんの、この男はっ。

八雲は、いつもストレートすぎるんだよ、バカ!

あたしの赤い頬をツンツンと人差し指でつつく八雲の手を叩き落とす。


「痛てぇっ!」

「公衆の面前で、自重してよ!」


こっちの心臓がもたないのでっ。

八雲はいつもあたしをからかってニヤニヤして……。

本当に、意地悪。



「ちぇー、こんなチャラ男でいいの、神崎さん?」

「和輝、未練たらしいよ」

「うるせー!」

「はいはい……声がでかいから、静かにね」


頬を膨らませる中野くんと肩に手を置く紫藤くん。

今は昼休み。

最近は昼休みにはこうして校外学習のメンバーで過ごしてる。

机をくっつけて、なんだか校外学習の延長みたい。



「泪のことは、誰にもやんねーよ?」

「えぇーっ、環奈のことは!?」

「田崎、俺にくっついたら玉ねぎ切った手で目ぇ擦るからな」



腕に抱きつこうとする環奈を牽制する八雲。

校外学習の日から、八雲は環奈ちゃんを名字で呼ぶようになった。


< 167 / 259 >

この作品をシェア

pagetop