マ王の花嫁 
その場の空気を読めない(というより、恐らく読もうとしない)、陽気なマーシャル(本人からは“マーシー”と呼んでほしいと言われた)と、彼をたしなめるレイチェルのおかげで、ピリピリと緊張していた馬車内の雰囲気が、かなり緩和された。
と言うより、私一人だけが勝手に緊張していたのかもしれない・・・。

「昨夜もあまり良く眠れてないようだな」
「え?えぇ・・・」

とてもリアルな夢を何夜も見続けると、さすがに寝不足になってしまう。
でも、夢の内容も含めて、誰にも言うわけにはいかない。
まして隣にいるこの人には絶対・・・。

思わず欠伸をかみ殺した私に、意外にもライオネル王は、穏やかな笑みを向けた。

「ガンザに着くまでまだ時間がある。少しは眠っておけ」
「眠くな・・・」
「寝ろ」

・・・このまま起きていても、王と“議論”するだけだろうし。
馬車の揺れも眠気を誘う・・・。
たぶん今、少しだけ眠っても、あんな・・リアルな夢を見ることはないだろう。
隣にライオネル様がいるから・・・たぶん・・大丈夫・・・。

と自分に言いきかせた私は、ライオネル王の端的な命令に従うことにした。

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