マ王の花嫁 
ライオネル王は、左右両方の爪先が見事になくなった自分のブーツを目の前に掲げ持つと、それをしげしげと眺めた。

これができたのは、いや、これをしたのは、もちろんあの子しかいない・・・!

ライオネル王は、そのブーツを無造作に地面に落とすと、いつの間にか私たちの傍に来ていたウルフを、すぐさま抱き上げた。

右手だけで。

この人、ウルフの粗相に怒っているのよね。
まさかとは思うけど、この場でウルフを「処刑」するつもりじゃ・・・!

眉間にしわを寄せ、無言でウルフをじーっと見るライオネル王は、正直言って怖かった。
ウルフもそう感じているのか、最初は嬉しそうに尻尾をふっていたけれど、今は耳も尻尾もだらりと下がった状態で、キューンと小声で吠えながら、怯えた上目で王を申し訳なさそうに見ている。
和気藹々と話していた周囲は、シーンと静まり返っていた。
自分の鼓動が、誰かの固唾を飲む音までもが聞こえてきそうだ。

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