マ王の花嫁 
「あ・・・なた、は・・・」

「怖がる必要はない」と私の耳元で囁くライオネル王の声に、なぜか鳩尾のあたりがゾワッとした次の瞬間、王は私の顎に手を添えて、自分の方へ上向かせた。
もう片方の手は、私の腰のくびれた部分に、回すように置かれている。

身動きが取れない私は、目を見開いてライオネル王を見るしかない。

この人、“魔王”のはずなのに・・・圧倒的な存在感を放っている上、威圧感はたっぷりあるのに、なぜ乱暴ではないの?

大きな体躯と手に似つかわず、ライオネル王の仕草はとても優しいことに、私は戸惑ってしまっているのに、王は余裕たっぷりに唇の片方だけ上向かせてフッと笑うと、その麗しく端正な顔を近づけて・・・私にそっと口づけをした。

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