見上げた空は広かった
真っ暗な部屋に机のランプが小さく机上とその周辺だけをオレンジ色に照らしている。

「部屋の電気つけないの?」
「机の上だけで十分じゃない?ビール一本は冷蔵庫に入れとく?」
「ありがとう」
そういってハナは2本あるうちの片方だけを俺に手渡した。
彼女はビールを開け、俺は飲みかけの白ワインを冷蔵庫から出してコップに注いだ。
俺はベットに腰掛けワインを飲み始め、ハナはベットの前の俺の勉強机とセットで置いてある椅子に座り俺の方を見ながらビールを飲み始めた。


「ここ来る前に何してた?」俺は唐突にハナに聞いた。
「何って日本にいたけど」
「勉強してた?それとも働いてた?」
「両方かな、学校行ってそのあとバイトしてみたいな。日本では普通だよ。何にもない普通の生活」
「普通って?」
「そこそこ収入のある両親がいて、そこそこの進学校にかよって、そこそこ仲のいい友達がいて。。。」
「つまらなかった?」
「つまらないことはなかったよ、でも楽しくはなかったかな。アルベルトは?」
僕はどうして楽しくなかったのか聞きたかったけれども、それを聞くと彼女の質問を無視することになってしまうと思ったから聞かなかった。


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