ハイスペックイケメンなんてお呼びじゃない!~バツイチナースは恋に無関心~
その日もう少しで午前の診療が終わるという頃、隣の婦人科の、看護師がうちの内科に飛び込んできてスタッフのいる裏方に入ってきた。


どうやら何かあったみたいだと思うと顔見知りでもある看護師がこう言った。

『小林さん、すみませんがちょっとウチを手伝ってくれませんか?確か小林さんは助産師も持ってましたよね?!』

そう言われたのだ、これは一大事と見て間違いない。


『はい、一昨年までは総合病院の産婦人科で助産師として勤務してました。とはいえ助産師としては一年ちょっとのぺーぺーですけども。』


『上の法律事務所に来ていた妊娠8ヶ月の妊婦さんが急に産気づいてしまったんです。初産なんですけど近くの大学病院の新生児用簡易保育器のある救急車の到着を待てそうにないんです。そちらも電話して来てもらうことにはなってますが、もうすぐ9ヶ月って所なのでとにかく搬送中の出産じゃ危ないので救急車を待ちつつこちらで出産させた方が良さそうだと先生が判断したんです。
でもウチは本来婦人科のみなので助産師が居なくて、お願いします!』


それはなかなか大変だぞ。

お母さんはもちろんベビーが心配な時期だ。

『渉先生、聞きましたよね?
隣の婦人科に助っ人に行きます。
香さん、こちらの後は大丈夫そうですか?』


『えぇ、大丈夫よ!任せて。
早く行きなさい。』


そうして私は久しぶりに命の現場に立つことになった。
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