ハイスペックイケメンなんてお呼びじゃない!~バツイチナースは恋に無関心~
美春とも顔見知りだとは、本当に運が味方してくれているかのようだ。
『頼む、美春に代わってくれ。』
もはやなりふり構わずなのは言う迄までもない。
38にしてやっと結婚をしたい相手を見つけたのだ。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
『んー?何、航くん。何か聞きたいことあるって渉に聞いて代わったけど。どうしたの?私になにか聞きたいなんて珍しいじゃない?しかも明日になれば職場で会えるのに』
渉から詳しくは聞かなかったのだろう、美春はいつもの調子でサラッと訪ねてくる。
『子ども達のお世話で忙しい所を悪いな。職場じゃ話しにくい話題だし、それに明日は法廷と顧問企業訪問で一日外だよ。』
『そう言えば明日は一日外回りだったわね。それで聞きたいことって?』
『小林葉月さんについてなんだが、彼女は特定の付き合ってる相手は居たりするんだろうか?』
電話の向こうで美春が黙った。後から双子の姉妹の声が小さく聞こえてきた。
『え?いきなり何で葉月ちゃんの事を?会ったことあったっけ?』
びっくりしつつも、面識があった事に驚いたように聞いてきた。
『さっきラウンジで見かけて、一目惚れしたんだよ。渉に聞いたらその辺りのことは美春のが知ってるだろうからって聞いてね...』
『うーん。航くんは気にしないかもしれないけどおじ様とおば様はどうかしらねぇ。ま、そもそも彼女は恋愛も結婚もする気がないわよ?そんな相手だけど航くんどうする?』
渋るような声で聞こえてきた内容に、疑問はあるが答えは決まっているので即答した。
『諦めるわけが無い。やっと見つけた相手なんだ。今結婚していなくて、そういう相手もいないのだと言うなら問題無い。』
『そう、じゃあ見てればそのうち分かるし気づくから先に言っておくわ。彼女はバツイチで5歳の娘さんがいるお母さんよ。その経験からか子どもが最優先って子だから恋愛も結婚もする気がないわ。なにしろ看護師だから娘さんと2人で生活していけるだけの仕事が出来るのもあるし、離婚した原因からかもう男性は必要ないって常々口にしてる子よ?
いくら航くんでも相当難しい相手よ?
まぁ、まずは葉月ちゃんと弥生ちゃんの2人を見てからまた気持ちを教えて?
それでも諦めないって言うなら私も航くんに協力するわ。
まずは、明日の朝エントランスホールで見てご覧なさい。7時半には弥生ちゃんと一緒に来るから。ビルの保育園に預けてるからね。
だから私と葉月ちゃんはママ友でもあるの。』
恋愛も結婚もする気がない理由は分かったが、だからと言って諦められるわけがない。
『そうか、分かった。ありがとう。
そういう事情なら娘さんと2人の時の雰囲気も見てみたいな。』
素直にそう思った。彼女は可愛いらしい顔立ちの女性だからきっと娘さんも可愛らしい子だろう。
『でも私が協力するのは出会うまでよ!その後は私は葉月ちゃんと弥生ちゃんの味方。ママ友だけど彼女いい子で妹みたいなものだから。』
あまり世話焼きなタイプではない美春がどうやら世話を焼きたくなるくらいの人なのか。
益々彼女への想いが募る。
『分かった、とにかく明日見てまた連絡するから。
よろしく頼む。』
こうして俺は彼女小林葉月さんとその娘さん弥生ちゃんの事を知った。
今から明日が楽しみで仕方なかった。
そうして、電話を終えて仕事を片付けて明るい気分でこの日は帰宅したのだった。