ハイスペックイケメンなんてお呼びじゃない!~バツイチナースは恋に無関心~
そうして待合室で待っていると彼女がやって来た。

いつものほんわかした雰囲気は欠片もなく気を張り詰めているのが分かる。

そして夫のはずの男性の態度と俺が居た事でうっすら感じ取ったのだろう。

彼女はキツめに絶対に立ち入らない事を言い渡し準備に向かって行った。



しっかりとした足取り、口調。
いつもより厳しい表情にも目が釘付けにされた。

彼女にはこんな面もあるのだ。


そうして彼女が診察室で依頼人とやり取りしてる微かな声が聞こえてきた。


どうやらあと少しで産まれるようだ。

無事に産まれてほしい。
我が子でもないのにそう、願わずには居られない。

命の誕生とはそんな感じなのかもしれない。

そうして、どれくらい待ったか。

時間としてはそんなに長くなかったと思う。


叫ぶ声を聞き少しすぎた頃。


[フギャー、フギャー]

と泣き声がした。


どうやら産まれたようだ。


『産まれた。』

『そのようですね。』


するとバタバタと足音がして、救急隊が到着。


中に入って行った。


そうしてまた慌ただしく保育器に入った赤ちゃんとその後にストレッチャーに乗った依頼人が運ばれていく。


『先生、サインの入った書類の保管お願いします。』

そう言いながら運ばれて行った。

それに彼女もついて行き、無事に搬送されたのだろう戻ってきた彼女が夫である人に説明を始めた。


そして詳しく知るはずもないけれど彼女の忠告は鋭かった


『ただし、産褥婦を興奮させるような話は控えて下さいね。出産で身体はとてつもないエネルギーをつかってかなり消耗しています。そんな時なので大切にしないと身体に何が起きるかわかりません。お忘れなき様お願いします。』


その声は無感情で平坦。
普段の優しさや柔らかさは無い。

そこにはこの事態の一旦は夫にあるぞ!と言っていた。

依頼人の夫も少し考えたようだ。

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