俺が愛した、あおいの話
ハハハと笑い声を上げて、自覚あったの?と笑い続けた。

すっかり忘れてしまってたけれど、和也は覚えてたみたいだ。

そうか、そうなのか、そうだったのか。
高校一年生の時…
あの時だけは、あの頃だけは、
和也の彼女になれてたのかな。

「さやかさん?まさか酔ってますぅ?」
不思議そうな顔で見つめられて、

「ゴメン、ゴメン!全然平気!」
そう答えて笑い続けた。

そんなに大それたものじゃなかった。
わたしたちは恋人じゃなかった。

手を繋ぐことも、キスをしたことも、
セックスだって一度もしていない。

「どうしたんですかぁ?さやかさーん!」
彼女がつまらなそうに訊く。

「ゴメン、ゴメン!ちょっと思い出してね」
そう言って、話を進めた。

「わたしと和也は家が近所でね、母親同士も親しかったのよ。だから毎日一緒に遊んで、プールも塾も一緒に通ったわ」

側にいることが当たり前だった。
兄妹みたいに育てられてきた。

そうして中学生になり、
付き合ってると噂された。

「わたしと和也にとってはね、一緒にいることが普通だったの。だけど周りは…誤解するわよね。何度もしつこく訊かれたりしたわ」

最初のうちは否定してた。
満面の笑みで、少し照れながら。

だけど時々ーーー「わたしのだからね?」
冗談まじりに肯定してた。

「そのうちみんなの公認になって、噂も徐々に下火になったけど、それも中学生までだったわ。高校は別のところだったから…」

幼稚園から中学校まで、毎日一緒に登校してた。

だけど高校は初めて違った。
初めて真逆の通学路だった。

「そしたら今度は破局したってね。あっという間に噂になったわ。ファンクラブまで結成されちゃって、和也は大変そうだった」
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