媚薬と私

僕も若かった・・・。


この後、ゆかりをホテルに誘おうと思ったのだ。


ゆかりだって、僕と何度もデートをしている。


人妻だろうと、僕の事は満更ではないはずだ。


ゆかりが人妻という事を、半分忘れかけていた。



花火大会が終わった。


僕たちは、大勢の人と一緒に、駅方面へ歩いた。



手をつないだまま・・・。




「・・・休んでいかない?」



僕は正面を向いたまま、ボソッと言った。


ゆかりは無言になったが、次に強い口調でこう言った。



「休んでいかない!!」



「・・・・・。」



「もう、いいかな、手を離して・・・。」



ゆかりは僕の誘いを断り、つないでいた手まで離した。


それまで一つだった二人の空間が、真っ二つに裂けた・・!


僕は謝り、悪くなった空気を何とかしようと、近くの喫茶店に入った。


二人とも、何も食べていなかったので、軽食を取った。


先程の事は、お互い何も言わず、また普通の会話に戻った。


しかし、手をつないでいた時とは違う空気感が流れている事は、否定できなかった。
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