最後の恋
彼が私に甘い言葉を囁き、優しく手を握る。


想像以上に幸せで穏やかな時間を彼はくれた。


だけどーーー幸せだと心が温かくなる一方で、別れへのカウントダウンは既に始まっていてそこに一歩、また一歩と近づく恐怖を感じていた。


幸せで満たされるほどに、その恐怖も比例して大きくなる。


伝える事すら出来なかったあの頃よりも幸せなはずなのに…時々、どうしようもなく辛くなって息が苦しくなる事がある。


何度も眠れぬ夜を過ごし、声を殺して枕を濡らした。


でも、それでも弱い私は今すぐに彼から離れることは出来なかった。


その時期がくる…それまでは私のワガママを許して…


誰に対して許しを請うべきか分からないそんな呟きは、一人きりの部屋の中で誰の耳にも届くことはなく夜の闇に何度となく飲み込まれていった。
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