最後の恋
最後に戸締りとガスの元栓を閉め私たちは彼のマンションへと向かった。


相変わらずのタワーマンションを見上げ、若干の緊張を感じながら彼の後に続き足を踏み入れた。


「お帰りなさいませ、一ノ瀬様。松野様。」


そう笑顔で出迎えてくれるマンションのコンシェルジュに会釈を返す。


何度も来ているうちに顔と名前を覚えてもらった。


そして、彼と同じように私にも声をかけてくれるコンシェルジュが執事っぽくて私的にはいつまでたっても慣れそうになかった。


いつものように部屋に入ると、彼は私の荷物を持ったまま彼の寝室に並んだ隣の部屋のドアを開けた。


「とりあえず、荷物はここに入れておくから。この部屋は杏奈の好きに使ってくれたらいいよ。ただし、寝るのは同じ部屋だけどね。」


彼の後に続き初めて入ったその部屋で、こっちを振り返った彼の顔は月明かりに照らされて表情まではよく見えなかった。


照明をつけようと壁のスイッチに伸ばした腕を彼に引かれた私は、あっという間に彼の腕の中に抱きしめられていた。
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