最後の恋
私は、翌日午前の新幹線で東京に戻ってきた。


紫乃との待ち合わせは3時。


場所は以前再会したあのホテルのカフェに決まった。


前回、あのホテルで再会した時はあまりにも突然だったからほとんど何も話せなかった。


今まで目を背け続けてきた真実と向き合う事への怖さは勿論あったけど、今は前に進みたい気持ちの方がはるかに強い。


一度、荷物を置きに家に戻る。


紫乃との約束の場所へ向かう途中、足が勝手に彼のマンションへと向かった。


遠目にマンションが見えてきた時、私の視界に2人の姿が写り込んだ。


2人のすぐ側にはタクシーが1台停車していて後方のドアは開かれたままだった。


紫乃を見送る所らしい…。真斗らしき人の姿は見えなかった。


しばしの別れを名残惜しむように言葉もなく見つめ合う2人の姿を遠目に見つめたまま、私の足は鉛のように動かなくなり目をそらす事すら出来なかった。


2人は2言3言、言葉を交わすと紫乃を乗せたタクシーは静かに走り去って行った。
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