最後の恋
「夏の野の 繁みに咲ける姫百合の
知らえぬ恋は 苦しきものそ」

「はい、じゃあ続けて現代語訳もお願いね。」

「現代語訳、夏の野原にこっそりと咲いている姫百合の花のように、人知れずあなたを想い続けるしかないこの恋は苦しいものです。」

「はい、ありがとう。」


私が座ると、先生がいつの間に書いていたのか黒板に書かれたその和歌の解説を始めた。


偶然とは言え、この和歌が私の気持ちを代弁してくれているようで読んでいて余計に切なくなった。


“ 人知れずあなたを想い続けるしかないこの恋は苦しいものです ”


私の彼への想いも本人はおろか、友達にさえ知られてはいけない想いだ。


誰にも言えない私の恋は、行き場のない苦しい恋だという事に今更ながら気がついた。
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