最後の恋
「知ってると思うけど礼央とは幼馴染で…私は子供の頃からずっと礼央のことが好きだった。高校だって同じところに行きたくて私が追いかけたし、中学の時に私から告白したけど…最初は断られたんだよね…。」

「え…?」


その言葉に驚いて思わず声を出すと、彼女は苦笑しながらも話を続けた。


「だけど、私ってかなり諦めの悪いワガママな子供だったから。礼央に好きな人ができるまででいいからって必死に頼み込んで、そんな私に最後は礼央が折れてくれて……って、今思うと本当に酷い話だけどね。」


ハハ…と自嘲気味な笑い声が小さく聞こえた。


だけど、私は笑えないしそんな彼女の気持ちも痛いほど分かった。


「高校生になって礼央に好きな人ができた事に気づいても私は約束を守らなかった。だけど、見ててすぐに分かったよ。杏奈のことが好きなんだって。」

「そんな事…」


あるわけないと思った。否定しようとしたのに、紫乃の言葉がそれを遮る。


「金曜のお昼休み…。」

「……」

「毎週図書室に本を借りに行ってたでしょ?杏奈の当番の日に。」


心臓がひときわ大きく揺れた。
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