最後の恋
教室に戻った私の目に映ったのは、いつもと変わらないように見える一ノ瀬君の姿だった。


と言っても、私が知ってる彼の顔なんてほんの少しで限られたものだけど。


横向きに座り、後ろにいる友達らしき人と笑っていた一ノ瀬君。


その笑顔は、無理をしてる笑顔には見えなかった。


私が、そんな彼の姿をマジマジと見てしまっていたからだろう。


不意に一ノ瀬君と目が合った…。


彼は目を逸らすでもなく私たちは暫くの間、お互いを見合ったままだった。


その間だけーーーたった数秒間だけど時間が止まったように感じた。


そして、さっきまでは友達と楽しそうに笑っていた一ノ瀬君の目が、少しだけ悲しい目をしていたような気がした。


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