最後の恋
ひんやりとしたシーツの感触を背中全体に感じたと同時に、彼の声が上から降ってきた。


「顔見せて」

「…………」


彼の手が私の顔を覆っている腕を優しく剥がすと、そのまま絡ませるように繋がる両手。

それでも素直になる事が許されない私は、彼と視線を合わせる事もできない。


「そんな顔して…別れの言葉なんて言うなよ」

「……………」


そう言った彼が私の涙の跡にそっとキスを落とし、最後に震える唇を塞いだ。
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